「深澤直人がデザインする生活の周囲展」が良かった
東京に行ったときに「AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展」を見た。
プロダクトデザイナーの深澤直人氏の個展。国内初だそうだ。
私は教育学部の美術科出身なのだが、デザインの授業の題材として取り上げられていたのをきっかけに知り、デザイン観に大きな影響を与えてくださっていて、この展示はぜひ生で見たいと思っていた。
プロダクトデザインと聞くと、多くの人は自動車や家具、時計など…、そして、華やかな装飾や鮮やかな色彩を連想するかもしれない。
実際、いかに目立つか・差別化するかを主眼にしたデザインは多いし、それらにはそれらの役割がある。
一方、深澤氏の手がけるデザインは、むしろ目立だちにくい方だ。では何が魅力かといえば、ひとつは、人の無意識下の行動の中からデザインのきっかけを見出すという考え方にある。その思考の裏側も少しのぞける展示だった。
展示について
こちらの記事の紹介がキレイにまとめられていた。
http://top.tsite.jp/lifestyle/lifetrend/i/35946735/top.tsite.jp
深澤氏がデザインした作品のなかから、最新作を含む選りすぐりの作品約110点を展示。無印良品、au(KDDI)、B&B ITALIA、パナソニックなどのブランドの製品としてデザインされ、グッドデザイン賞など著名な賞を受賞した作品が多数出品される。展示室という空間のなかに、イスや家電、住宅設備など生活のためのデザイン作品を配置することで、深澤の思考を立体化。深澤がデザインした「もの」が、生活の中で使用されることにより、さらにその周囲の空気をもデザインすることを体感できる。
本展覧会タイトルでもある「Ambient」とは、直訳すると「環境」だが、深澤氏はこの言葉を「周囲」や「雰囲気」と捉えている。環境から「もの」の輪郭を導き出しているが、それはつまり、その環境が要請したものであり、そこにあるべきものを生み出すことなのだ。そのようにして生み出されたものがその場に投じられることによって、ものと空間が相互に作用し、はじめて「いい雰囲気」が醸し出される。
展示の様子
会場は決して広くはないが、真っ暗な部屋や、ダイニング、キッチン、浴室など小部屋に分かれており、それぞれにマッチするプロダクトが展示されていた。
どの部屋もまさに「良い雰囲気」だった。
そして、展示作品約110点のほとんどについていた深澤氏のコメントもおもしろかった。なにしろ小難しいことを全く書いていないのだ。
しもぶくれで、そのふくらみと同じようなハンドルがいいなと思った。
日本の急須のようなといったらいいんだろうか、丸みもほしかったんだ。
MUJIらしい椅子をデザインするのはやさしくない
足置きの丸い鉄の輪を固定するネジを見せない。
座の裏側に指をかけられる溝が彫り込んである。
オフィスの椅子はいつからあんなにメカメカしくなってしまったのだろう。もっとソフトで静かな椅子がいいと思う。椅子の姿は人の姿に似ているから
…こんな感じだ。有名な作品も、ちょっとした遊び心や気付きから生まれたんだなとか、ジャスパー・モリソン氏との親しさの一端が見えたりと興味深かった。
実物で見ると案外小さいんだなとか、空間によって見え方が変わるんだなとか。触ったり座ったりはできなかったが、360°から作品をじっくり見れてよかった。(写真でしか見たことのないものも多かったので…)
終わりに
深澤氏のデザインは、そのプロダクトの機能や造形だけでなく、それが置かれたときの周囲の環境や、人の行動までもデザインしている。 プロダクトに限らず、Webサービスやアプリのデザインでもそうした着眼点は大事だと思っており、今回の展示でも良い刺激をいただけたので、行ってみてよかったと思う。
ああ〜、もっとBIGになって壁掛式CDプレーヤーが映えるような住環境を将来手に入れたいぞ〜。
無印良品 壁掛式CDプレーヤー CPD‐4/76475569 白
ちなみにこの展示の本はamazonでも売っており、行けなかったけど興味ある方は購入すると良いと思います!